GWが終わると、どこか気が重くなる。
そんな気持ちを抱えたまま出勤する社会人の中には、「もう無理かもしれない」と本気で退職を考える人が少なくありません。
近年、この時期に急増しているのが“退職代行サービス”の利用です。
連休中に心身をリセットしたことで見えてくる本音、入社前とのギャップ、他人との比較で募る焦り──さまざまな要因が重なり、「辞めたい」という思いが一気に現実味を帯びてくるのです。
詳細を説明していきます。
長期休暇で「決断エネルギー」が回復
長期休暇、特にGWのようなまとまった休みは、普段の仕事のストレスから一時的に解放される貴重な期間です。
この期間に、精神的・肉体的な疲労が和らぎ、「自分を取り戻す時間」が確保されることで、冷静な判断力や意思決定力が回復すると言われています。
日常の忙しさの中では、「辞めたいけれど動けない」「会社に行くだけで精一杯」と感じていた人でも、休暇を通じて一度立ち止まり、客観的に自分の働き方や将来について考える余裕が生まれます。
その結果、「本当に今の職場でこのまま働き続けてよいのか？」「ずっと我慢し続けて大丈夫なのか？」といった根本的な問いが頭をよぎり、「辞める」という選択肢が現実的なものとして浮かび上がってくるのです。
また、休暇中に家族や友人と過ごしたり、旅行や趣味に没頭したりすることで、「自分らしい時間」の大切さを再認識するケースも少なくありません。
そうした体験が、「もう一度、自分の人生を見直したい」という気持ちを強め、仕事のストレスや違和感をそのまま放置するのではなく、行動に移すきっかけになるのです。
さらに、心身がリフレッシュされることで、自信や行動力も戻ってきます。
通常であれば億劫に感じる「退職の手続き」や「上司とのやりとり」も、「今ならやれるかもしれない」と感じられるタイミングになるのです。
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入社前後のギャップによる失望とは？
新卒や中途を問わず、多くの人が「理想」と「現実」の間にギャップを感じて退職を考えるようになります。
これは決して珍しいことではなく、特に社会人として働き始めたばかりの時期には、企業からの説明やイメージとの違いがストレートにストレスとなって表面化しやすいです。
たとえば、入社前の面接や会社説明会では、
- 「働きやすい職場です」
- 「ワークライフバランスを大事にしています」
- 「やりがいのある仕事ができます」
といった魅力的な言葉が並びます。しかし、いざ入社してみると、
- 残業が常態化しており、プライベートの時間が確保できない
- 社内の人間関係がギスギスしていて相談しにくい
- 業務内容が想像と全く違い、単純作業や雑務ばかり
といった“現実”が待ち受けていることも少なくありません。
特に近年では、求人票や採用サイトでの情報の見せ方が洗練され、表面的な「良い面」ばかりが強調される傾向があります。
そのため、応募者側が企業の実態を把握しにくくなっており、「こんなはずじゃなかった」と失望感を抱くケースが増えています。
こうしたギャップがストレスやモチベーションの低下を招き、早期離職の一因となります。
そして「辞めたいけど、上司に言い出せない」「退職理由をうまく説明できない」といった心理的ハードルから、退職代行サービスの利用を選ぶ人が増えているのです。
このような背景には、企業側の情報開示の不透明さだけでなく、求職者自身が「企業を選ぶ視点」や「情報を見抜く力」を持ちにくい構造的な問題も関わっています。
連休明けの憂鬱感と比較による焦りとは？
GWなどの長期休暇明けには、多くの人が共通して感じる「仕事に戻るのがつらい」「会社に行きたくない」といった気持ち——いわゆる“連休明けブルー”に襲われます。
これは一種の心理的反動で、日常の緊張感やルーティンから一時的に解放されたことで、現実に戻ることへの抵抗感が強くなるためです。
このタイミングで現れるのが「比較による焦り」です。
休暇中、友人や家族との会話、SNSなどを通じて他人の充実した生活やキャリアに触れる機会が増えると、無意識のうちに自分と比べてしまい、強い劣等感や焦りを感じることがあります。
たとえば
- 大学時代の友人が転職して活躍している
- SNSで「仕事が楽しい」「副業で月収〇万円達成！」という投稿を見る
- 実家に帰省して、親から「最近どう？ ちゃんと働けてる？」と聞かれる
こうした場面が引き金となり、「自分はこのままでいいのか？」「本当はもっとやりたいことがあったのでは？」という内省が始まります。
それまで“何となく我慢していた”職場環境や仕事内容が、一気に耐えがたいものに感じられ、「辞めたい」という気持ちが本格的に芽生えるのです。
この心理的圧力がピークに達するのが、連休明け初日の出勤前夜や当日の朝。
ベッドから起き上がれなかったり、通勤中に涙が出てきたりと、身体的な反応として現れる人もいます。
しかし「退職したい」と思っても、周囲に相談しづらかったり、上司との関係性に不安を感じたりして、一歩踏み出せない人が大半です。
そんな中、「退職代行サービスを使えばすぐに辞められる」という選択肢が、現実的かつ心理的ハードルの低い“救済手段”として浮上するのです。
退職代行サービスの利用実態
退職代行サービスとは、その名の通り「本人に代わって退職の意思を職場に伝え、退職手続きを進めるサービス」です。
数年前までは「珍しい」「特殊なケース」という印象が強かったこのサービスも、現在では一般化しつつあり、特に若年層や入社数ヶ月以内の利用が目立っています。
実際の利用者層は？
最新の調査（※退職代行サービス「モームリ」などの公表データ）によると、利用者の大多数は20代～30代前半。
特に新卒で入社してすぐの4～6月にかけて利用が集中しやすく、5月は一年で最も利用件数が多い月とされています。
また、職種別で見ると以下のような傾向が見られます。
- サービス業（飲食・接客など）
- 営業職
- 医療・介護職
など、対人ストレスが大きく、労働時間が長い業種での利用が多いのが特徴です。
なぜ「代行」を選ぶのか？
退職代行が選ばれる最大の理由は、「会社に辞めたいと伝えることへの精神的ハードルが高い」ことです。
利用者の主な悩みとしては以下が挙げられます。
- 「上司が怖くて退職の意思を伝えられない」
- 「過去に辞めたいと言ったら引き止められた」
- 「退職を申し出たが、取り合ってもらえなかった」
- 「精神的に限界で、もう会社に連絡すらしたくない」
また、精神疾患（うつや不安障害など）を抱えており、自分でやりとりすること自体が困難なケースもあります。
料金や対応内容は？
退職代行サービスの料金はおおむね 2万〜5万円程度。
サービス内容は以下のようなものが一般的です。
- 退職の意思を会社へ連絡
- 退職日・有給消化の調整
- 書類（離職票・源泉徴収票など）の受け取り代行
- 必要に応じて弁護士・労働組合による交渉サポート（※法的対応が必要な場合）
弁護士資格のない業者は交渉行為ができないため、労働トラブルの可能性がある場合は、労働組合系や弁護士事務所が提供する代行サービスが選ばれる傾向があります。
退職は“逃げ”じゃない！“選択”です。
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社会の変化が後押し
「自分の退職は自分で伝えるべき」という価値観は徐々に変化しつつあります。
パワハラ・ブラック企業問題が広く認知される中で、「心や体を壊す前に逃げていい」「自分を守る手段として使っていい」という考え方が若い世代に広まっています。
実際、退職代行サービスの存在がニュースやSNSで広まり、「そんな方法もあるのか」「使っていいんだ」と知ることで、精神的に追い詰められていた人たちがようやく行動を起こすきっかけになることも少なくありません。
まとめ
ゴールデンウィーク明けに退職代行サービスの利用が増える背景には、心身の回復による「決断エネルギー」の再生、入社前後の理想と現実のギャップ、そして連休中に他人と自分を比較して生じる焦りなど、複数の心理的・社会的要因が複雑に絡んでいます。
特に新卒社員を中心に、サービス業や営業、医療職などストレスが大きく離職しやすい業界で利用が集中しています。
退職代行は、単なる逃避ではなく、声を上げられない人々の「最後の自衛手段」としての役割を果たしているのです。
