老齢年金は基本的に65歳から受給をすることができます。
ほとんどの人は、65歳になって受給します。
一方、早く年金をもらいたいと考え、繰り上げ受給を考えている人もいるのではないでしょうか。
今回は、年金繰り上げ受給しない方がいい人、した方がいい人をお伝えします。
繰り上げ受給
本来なら老齢年金は65歳から受給できるようになります。
繰り上げしたい場合、繰り上げ手続きをすることで60歳から65歳までの間に受け取ることができます。
これを繰り上げ受給といいます。
繰り上げ受給は、年金を65歳より早く受け取ることができるのでメリットのように感じます。
しかし、早く受け取るデメリットとして65歳の年金受給と比べると受給額が減少してしまいます。
今までは、1カ月につき0.5%の減少でしたが、2022年度から年金制度改正により、1カ月につき0.4%の減少に変更されました。
計算は、減少率0.4%×繰り上げ請求をした月から65歳になる日の前月までの月数で算出することができます。
例えば、60歳の誕生月から繰り上げ受給します。
65歳の受給額が年間180万円とします。
計算すると、0.4%×60カ月=24%
180万円×(100%-24%)=136.8万円
60歳の誕生月から繰り上げ受給した場合は、136.8万円となります。
減少率は、受給年齢60歳24%、61歳19.2%、62歳14.4%、63歳9.6%、63歳4.8%となります。
一度繰り上げ受給すると減額率は生涯変わることはありません。
そのため、最後まで減額された年金を受け取り続けることになります。
繰り上げを取りやめたいと思っていても取り消しすることはできません。
さらに老齢基礎年金と老齢厚生年金は一緒に繰り上げることになるので注意が必要です。
繰り上げ受給するかしないかは一回しか選択できないので慎重に考える必要があります。
年金繰り上げ受給しない方がいい人
年金繰り上げ受給について説明しました。
繰り上げ受給は、年金額が減るだけでなく、他にもデメリットがあります。
次のような人は、繰り上げしないほうがいいかもしれません。
国民年金の任意加入や保険料の追納したい人
国民年金は、40年間保険料を納付しないと満額に受け取ることができません。
満額に近づけるために、国民年金の任意加入や追納して増やしていく方法があります。
繰り上げ受給にすると任意加入や追納をすることができません。
任意加入や追納を検討している人は、繰り上げしないほうがいいかもしれません。
他の年金を受け取りたい人
国民年金の第1号被保険者の夫が死亡した場合、夫に国民年金の加入期間が10年以上あれば、その妻は60歳から65歳になるまでの間に受け取ることができる寡婦年金ですが、繰り上げ受給にすると受け取ることができません。
65歳年金受給しているケースで事故、ケガ、病気などにより障害になってしまった場合、請求することで障害年金を受け取ることができます。
しかし、繰り上げ受給にすると事故、ケガ、病気などにより障害になってしまったとしても障害年金を受け取ることができません。
他の年金と合わせて受給ができないのがデメリットになります。
雇用保険受給を考えている人
雇用保険の失業保険を受給する人が繰り上げ受給すると、厚生年金の一部もしくは全部が支給停止になります。
年金の繰り上げ受給の代わりに年金額は減ってしまうので雇用保険受給を考えている人は、よく考えて選択しましょう。
60歳を過ぎても働く人
60歳以上で厚生年金に加入して繰り上げ受給で年金を受け取る人は、基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円以上になる場合、60歳以降で仕事を続けながら受け取ることができる「在職老齢年金」の一部もしくは全部が支給がなくなります。
繰り上げ受給は、受け取る年金額が減少されるところからさらに在職老齢年金の調整が入るので、受け取ることができる年金額は大きく減ってしまいます。
高年齢雇用継続給付を受け取る人
高年齢雇用継続給付には、高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金の2種類です。
60歳以降も働いて賃金が60歳時点の75%未満になる、60歳以上65歳未満の一般被保険者であること、被保険者であった期間が5年以上である場合は、65歳になるまで最大で賃金の15%に相当する高年齢雇用継続基本給付金を受給することができます。
また、雇用保険の基本手当を受給した後、60歳以後に再就職して、再就職後の各月に支払われる賃金が基本手当の基準となった賃金日額を30倍した額の75%未満となった場合、以下の5つの要件を満たすと65歳になるまで再就職先での賃金の最大15%に相当する高年齢再就職給付金を受給できます。
- 60歳以上65歳未満の一般被保険者であること
- 基本手当についての算定基礎期間が5年以上あること
- 再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上あること
- 1年を超えて引き続き雇用されることが確実であると認められる安定した職業に就いたこと
- 同一の就職について、再就職手当の支給を受けていないこと
繰り上げ受給をすると高年齢雇用継続給付によえり一部もしくは全部が支給停止になるので、受け取る年金額は大きく減ってしまいます。
60歳を過ぎても働く人は注意しましょう。
年金繰り上げ受給した方がいい人
繰り上げ受給すると最後までの年金額が減ったり、受け取れるはずの年金が受け取れないことがあるので、早く受け取れる分リスクが大きくあります。
トータルで考えると一般的におすすめはできません。
しかし、全員65歳でなければならないのかというとそうではありません。
いつまで生きることができるのかわかりません。
いつ何が起きるかわからない人生なので早めに年金を受け取りたいという人も少なくありません。
目安として次のようなケースは、年金繰り上げ受給を検討してもいいのではないでしょうか。
働くのが難しく貯金が少ないこと
家族の介護により働くのが難しい、自分の体調により働くのが難しいなど事情があって働くのが困難であること。
さらに貯金も少なくギリギリで生活している場合は、65歳までの年金受給まで間に合わないため、早く受け取らないといけません。
その時に少しでも収入を確保するため繰り上げ受給を検討しましょう。
貯金が少なく、収入が無いと生活が苦しくなり心の余裕がなくなります。
少しでも収入の確保が必要です。
まとめ
年金繰り上げ受給しない方がいい人、した方がいい人をお伝えしました。
繰り上げ受給を考えている人は、減額率は変更されているとはいえ、繰り上げ受給しない方がいい人、した方がいい人を参考にしてみましょう。
繰り上げ受給請求は、1回のみです。
後から変更、取り消しはできませんので、よく考えて検討していきましょう。